C 森の中の2人
翌日の土曜日は、絶好のバーベキュー日和だった。 「真由〜! ヨロシクな♪」 と涼が片手を上げる。 その隣りにはメグ。 「・・・ちょっとっ!!」 あたしは慌ててミドリの袖を引っ張った。「どーなってんの?」 あたしが小声で尋ねると、ミドリもあたしに顔を近づけ小声で、 「他の女子と話し合いの結果、ウチらが涼と同じ班になる権利もらったんだよっ!」 と小さくガッツポーズを作って見せた。チハルも、 「チョーラッキーだよね〜♪ ・・・って、殆どミドリが強引にこの権利奪ったようなもんだけどね」 と言って笑っている。 このバーベキューは、男女それぞれ3人ずつの 6人1グループでやることになっているんだけど・・・ 確かミドリとチハルとは同じグループってことにしてたけど、相手の男子チームはまだ決まってなかったよね? 「なんでそんなこと勝手に決めちゃったの? ちょっと相談してよ〜」 「・・・あんた、バカ? どっかの男子グループと一緒にならなきゃいけないんだから、いい男のグループと一緒になりたいじゃん」 「そうそう! それに、その話し合いのとき、真由、恭子と一緒に屋上行ってたとかなんとかで、いなかったじゃん」 ミドリとチハルはそう言ったあと、ちょっと涼たちの方を振り返りにこやかに手を振った。そしてまたあたしの方に向き直り、 「とにかくさ、スタートが肝心だから! この親睦バーベキューで、一気に他の女子を出し抜く気で行くよっ!」 とあたしの手の上に自分たちの手を重ねる。 「じゃ、締まって行こ―――っ!」 って・・・ なんでメグと同じグループになっちゃうのっ!? 避けようと思ってる矢先にっ!! 「ちょっと女子の皆さん? なんか気合い入ってるとこアレだけど、係り決めちゃわない?」 涼の提案で、男女それぞれでジャンケンをして、グーはグー、パーはパー、チョキはチョキ同士でペアになり、作業を分担することになった。 「じゃ、グーはオレとかまど作り〜」 「や〜ん♪ 超ラッキー♪」 ミドリが涼とペアになり、満面の笑みを漏らす。 「じゃ、佐倉さんはオレと食材切る係ね?」 「・・・って、アンタ誰?」 「中野だよっ! もうクラス替えして1週間経つんだぜ? いい加減覚えてくれよっ!!」 チハルは不機嫌そうな顔をして、野菜や肉が入ったスーパーの袋を手に取った。 チハル・・・ ものすごい面食いなんだよね。 中野くんも悪くないけど、涼やメグと比べたら見劣りするよね。 背だってそんなに低くないのに、涼とメグが180以上あるから小さく見えるだけで・・・ って・・・ ―――・・・・・・えっ? ミドリと涼がペアで、チハルと中野くんがペアってことは・・・ 「ん〜じゃ、焚き木拾いヨロシクな?」 涼がメグの肩に手をかける。 あ、あたしとメグがペア――――――ッ!? 「なんか、1番メンド臭そうだな・・・」 メグが腰に手をあててそう言うと、涼は、 「じゃ、変わるか?」 と言ったあと、あたしの方を向いた。「真由。オレと焚き木拾い行こ」 「だ、だからぁっ! 呼び捨てにしないでって!」 「んじゃ、田中」 「それはもっとイヤっ!」 「なんだよ〜? ワガママだなぁ」 「あんたねぇっ!」 と涼を睨みつけても、涼は楽しそうに笑ってるだけ。 こいつ絶対、あたしのことオモチャにしてる! ・・・恭子や他の女子は、こいつのどこがいいんだろ? 顔? ・・・よく分かんない。 でも、メグと変わってもらうのは、ありがたいかも・・・ とあたしが考えていたら、メグは、 「・・・いいよ、別に。 もう決まったことだし」 と森の方に向かいかけた。「・・・行くよ?」 って・・・ あたしに言ってるんだよね? 「う、うん・・・」 仕方なく後をついて行くあたし。 この那珂間川も、もっと下流の方に行けばもうちょっと拓けたところを流れているんだけど、今日は上流の方に上がってきているから、川原の両脇がすぐ森というか、林になっている。 そこに踏み入るメグとあたし。 5分ぐらいガサガサと踏み分けて行ったあたりで、メグが黙ってしゃがみ込み、落ちている枝を拾い始めた。 |
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ちょっとメグを見下ろしたあと、あたしも少しだけ離れて同じように枝を拾い始めた。 みんなといるときは、すごくソフトな?人当たり良さそうな感じに見せてるけど、他に誰もいなくなると、途端にメグは不機嫌そうになる。 ―――・・・ 息苦しい。 とても親睦どころじゃないんですけど? このバーベキュー・・・ メグは、まるであたしなんかいないみたいな態度で枝拾ってるし・・・ いーけどっ! あたしだって、無視してやるからっ! 半ばヤケになりながら手当たり次第に枝を拾っていたら、 「・・・お前、なに拾ってんの?」 とメグが声をかけてきた。 心臓が飛び出るんじゃないかってくらい驚いたけど、顔には出さない。 一瞬だけメグの方を向いたあと、 「は? ・・・焚き木にする枝でしょ?」 と言い終らないうちに顔を背けてやる。 なに当たり前のこと聞いてんの? メグが小さく溜息をつく。 「・・・ってか、それ、火ィつかねーから」 「え?」 再びメグに顔を向ける。 「湿ってんだろ? その辺の枝。 よく見ろよ」 「〜〜〜〜〜ッ!?」 なにッ!? その言い方ッ! だったら、最初から教えてよねっ!! もう、こんなに拾っちゃったじゃんっ!! あたしはムッとしたまま立ち上がり、袋に拾い集めた枝を派手に投げ捨てた。 そんなあたしをメグがチラリと見上げる。・・・けれど、またすぐに枝拾いを続ける。 ムッカ〜〜〜ッ!! なんか、6年の間に、メグ根性悪くなってないっ? って言うか、他の女子と話すときは、そんな感じじゃないよね? もっとソフトな感じじゃんっ!! 乾いた地面を見つけ、あたしは再びしゃがみ込んで枝を拾い始めた。 ・・・やっぱ、まだ根に持ってる? 小5のときのこと。 執念深いな〜・・・ あんた、背は高いけど、小さいよ! 小さい男だよっ!! お腹の中で悪態をつきながら、メグの背中に向かって舌を出す。 「・・・お前さ」 ドキ―――ッ! ・・・ば、バレた? 舌出してるの・・・ もしかして、背中に、目ある・・・? 「な、なによっ」 「・・・涼と知り合いだったのか?」 「は?」 メグはあたしに背中を向けたまま、枝を拾い続けている。 質問の真意が分からないまま、とりあえず、 「・・・1週間前に、初めて口きいたようなもんだけど・・・?」 と答える。 メグはまたチラリとあたしを振り返って、 「・・・ホントかね」 「は?」 「狙ってたんだろ」 ちょっとバカにしたような目線をあたしに向ける。「涼は背も高ぇーし、顔もいいしな」 「はぁ? ・・・どーゆー意味よ?」 「勘違いするなってコト。 涼は女には誰にでもあーなんだよ」 ちょっとッ!? 持っていた枝をメグの足元に投げつけた。 「誰が勘違いしてるってっ!? 言っとくけど、あたしは涼のコトなんかなんとも思ってないんだからねっ! あたしをその辺の女子と一緒にしないでよっ!!」 ムカつく〜〜〜ッ!! 6年ぶりに会話らしい会話したと思ったら、コレ? あの、可愛いメグはどこ行っちゃったのっ!? 「あたしはねっ! そんな見た目に誤魔化されたりしないのっ! 涼みたいに背が高くなくても、顔良くなくても、スポーツ出来なくてもぜーんぜんいいのっ! 中身を見てるのっ!!」 あたしが勢い込んでそう言ったら、メグも勢いよく振り返った。 「じゃあ! つっ―――・・・」 と何か言いかけて、口ごもるメグ。 「・・・つ?」 メグは眉間にしわを寄せたまま、しばらくあたしの顔を見たあと、 「・・・なんでもない」 と視線をそらした。 「・・・なによ?」 とあたしが聞いても、返事もしないでまた枝を拾いはじめるメグ。 「ねぇっ?」 メグはまた、あたしなんかいないみたいな態度で背中を向けている。 ―――自分だけ言いたいコト言って、あたしの質問は無視っ? ホントムカつく、こいつっ! 「〜〜〜あたし、1人で拾ってくるっ!」 「え?」 あたしがさらに奥の方に入っていこうとしたら、メグが顔を上げた。 「おい! そっちは足場悪いぞ?」 「うるさいなぁ! ほっといてよ!!」 「お前になんかあったら・・・っ」 メグが大声を出した。直後、「・・・面倒なことになったら、オレの責任になるだろ・・・」 と呟くように言って、眉間にしわを寄せる。 ・・・あたしになんかあったら、メグのせいになるから? そんな面倒なことはゴメンだって言いたいの? ・・・あぁ〜っそ! 心配してるんだ? ―――・・・あたしじゃなくて、自分のっ!! 「安心してくださいっ! あたしになんかあっても、メ・・・っ」 一瞬メグと呼びそうになって、慌てて言い直す。「ち、千葉くんのせいになんかしたりしませんからっ!」 メグが睨むようにあたしを見下ろす。 あたしも負けずに睨み返してやった。 「―――勝手にしろ」 「勝手にするよっ!!」 とメグに背を向けて、2、3歩あるきかけたら、地面だと思って足を踏み出した場所が、急にフワリと沈んだ。 「ッ!? きゃぁッ!」 「おいっ!?」 自分の身体が重力にしたがって、落下していくのが分かる。 ウソっ!? ここ崖だったっ!? あ、あたし、死んじゃうの・・・? 「真由っ!」 ああ・・・ 死ぬ直前って、それまでの人生が走馬灯のように頭をめぐるって本当なんだ・・・ メグがあたしに手を差し出してる・・・ コレって、あたしたちが絶交する日の朝の出来事? 「ヤジマたちがなんか言ってきたら、ボクに言いなよ?」 って、言ってくれたときのメグだよね・・・ 「早くしないと、遅刻するよ?」 って言って、あたしの手を繋いだメグだよね・・・ ・・・・・・あたし、死ぬ直前だっていうのに、結局メグのことばっかり思い出してる・・・ そっか。 ・・・きっと、仲直り出来なかったままなのが、相当気になってたんだ・・・ あたしは走馬灯の中のメグの手を取った。 ゴメンね、メグ・・・ 仲直り出来ないままで・・・ 今度生まれ変わって、もしもまたお隣さんになれたら、もう絶対ケンカなんかしたくない・・・ 「・・・い」 ―――・・・・・・ ―――それにしても・・・ あたし、まだ落下してる最中? 「おい・・・」 この崖ってそんなに高いのかな? ・・・それに、そろそろ走馬灯のメグが、フェードアウトしていってもよさそうなもんじゃない・・・? ・・・っていうか・・・ ―――え? このメグの顔・・・ 小5に見えないんだけど・・・ 「おいっ? しっかりしろっ!?」 |
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「えっ!?」 軽く頬を叩かれて、ハッとして目を見開いた。 気が付いたら、あぐらをかくようにして座りこんでいるメグに、抱かれるような格好のあたし!! 「う、うわっ! な、なになになにっ!?」 慌てて飛び起き、メグから離れた。 メグはそんなあたしをチラッと見たあと、 「何って・・・」 と言って上の方を指差した。「・・・あそこから落ちたみたいだな」 メグが指差す方向を見たら、3メートルあるかないかくらい上に、さっきまであたしたちがいたと思われるところが見えた。 ・・・なんだ・・・ こんな低い所から滑り落ちただけだったんだ・・・ どうやら、あたしはあそこから滑り落ちるときに、メグの腕かなんかを引っ張って巻き込んでしまったみたいだった。 「・・・ゴメン」 ものすごく不本意だけど、一応小さい声で謝る。けれどメグは、聞こえているのかいないのか、あたしの謝罪は無視して、 「・・・お前、そこ登れるか?」 と崖の上の方を指差す。 メグに言われ、立ち上がって 滑り落ちた斜面に手や足をかけてみる。 「・・・ダメ。角度が鋭すぎてあたしじゃ登れない・・・」 メグを振り返る。「メ・・・ ち、千葉くんなら登れるんじゃないの?」 あたしが登れなくても、メグが登って行って、助け呼んでくればいいよね? 「オレは・・・」 メグは一瞬言いよどんだあと、「無理だ」 「なんで?」 メグはちょっとだけあたしを見たあと顔を伏せた。 「―――・・・足が痛い」 「えぇっ!?」 慌てて座ったままのメグに駆け寄る。「ど、どーしたのっ!?」 「・・・分かんね。捻ったのかも」 「ちょっと見せてっ!」 メグは左の足首を押さえている。その手をどかし靴を脱がせ、ジーンズもめくり上げた。 「・・・腫れてはいないみたいだけど・・・」 もし折れてたとしたら、時間が経ってから腫れてくるから安心は出来ない。 「どうしよう・・・ 添木とか、した方がいいかな・・・」 メグはちょっと慌てたようにして、 「いや、折れてるとかそんなんじゃないっ! ・・・と、思う」 と言いながら、ジーンズの裾を下ろした。 ホントっ? ・・・だったらいいけど・・・ 「それにしても、ここ・・・どこだろ? なんか小さな川っぽいけど、水流れてないよね」 あたしは辺りを見回した。 あたしたちが落ちた所は、周りの森からそこだけぽっかり木がなくなっている、小さな川の跡地のようだった。 「小川かなんかだろ。 今は水が少ないから干上がってるだけで・・・」 「誰か――――――っ!!」 あたしは声を限りに怒鳴ってみた。「助けて――――――ッ!!」 けれど、声は森に吸い込まれるように消えていくだけで、とてもみんながいる川原の方にまで届いているとは思えなかった。 「・・・お前、ケータイは?」 「あっ!」 そうだよっ! それでミドリたちに連絡すれば―――・・・ と一瞬喜びかけて、 「・・・ダメだ・・・ カバンに入れたまま、置いてきちゃった・・・」 と肩を落とす。 「・・・使えねーな」 メグが小さく呟いたのが聞こえた。 「う、うるさいなぁっ! そーゆーあんたはどうなのよっ!? 自分のケータイで連絡すればいいじゃんっ!!」 あたしがムッとしてそう反撃すると、 「―――オレ、ケータイ持ってねーもん」 「ほ〜らっ! 自分だって置いてきたんじゃん!」 「・・・じゃなくて、もともと持ってない」 「えっ・・・」 ・・・今どき、ケータイ持ってない高校生、いたんだ・・・ 「・・・持てば? 便利だよ、いろいろ・・・ すぐ連絡取れるし・・・」 「別に、なくても困らないから」 「・・・あ、そう」 それきり、あたしもメグも黙って座りこんでいた。 ・・・もうどれぐらい時間経った? 2時間とか3時間くらい? まだ太陽が見えるから、夕方ってことはないよね? 何時間経ってもあたしたちが戻って来ないってなれば、いくらあのミドリたちでも心配して探してくれるに決まってるもんね。 そう考えたらちょっとだけ安心できて、あたしもメグからちょっと離れた所に座った。 それにしても、晴れてて良かった・・・ これが、今にも降りそう・・・なんてお天気だったら最悪だもんね。 ―――でもッ!? 「どうしよう・・・」 急に胸に湧いてきた不安にそう呟いたら、 「何が?」 とメグ。 「今は晴れてるけど、急に雨とか?降ってくるかも・・・」 「え?」 「ほらっ! 山の天気は変わりやすいって言うでしょ? いきなり雷雨とか?きたらまずいよ・・・」 あたしが空を見上げながらそう言ったら、メグが吹き出した。 「お前・・・ それ、富士山とか北岳とか、そーゆーレベルの山だろ? こんなの山のウチにも入らねーよ」 「え?」 メグはクックッと笑いながら、 「今日も明日も晴れ。降水確率0%って言ってたぞ?」 「―――・・・ああ、そーですか!」 ムカつくやら恥ずかしいやらで・・・ きっとあたし、顔赤くなってるっ! 慌ててメグから顔を背ける。 ひとしきり笑った後、 「あ〜あ」 と言って、メグが寝転がった。「眠い」 いつ助けがくるかも分からないのに・・・ しかも、メグは怪我までしてるっていうのに・・・ 「・・・のん気だね」 あたしがそう言うと、メグはフンと鼻で笑って目を閉じた。 |
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あたしも座ったまま膝を抱えてそこに頭を乗せ、目を閉じた。 あちこちから鳥のさえずる音が聞こえてくる。 ここに座ってると分からないけど、かすかに風でもあるのか、木の葉が作るさわさわという音も耳に心地いい。 暑くも寒くもない4月の太陽が背中を優しく包む。 「・・・気持ちいい・・・」 小さく、本当に小さくそう呟いただけなのに、 「・・・だな」 とメグが返してきた。 驚いてメグを振り返る。 メグは目を閉じたまま、まるで眠ってるみたいに見える。 メグといると、緊張して心臓がドキドキするか、ムカついてイライラするか、焦って避けようとするかだったのに・・・ ・・・あたし、今、すごく穏やかな気持ちでいる。 3メートルの崖(とも言えないような高さだけど)から落ちて、とてもあたしじゃ登れない角度で、メグは怪我してて、ケータイもないから連絡も取れないっていうのに・・・・・・不思議。 「もし・・・」 と言いかけて、あたしは口をつぐんだ。 もし助けが来なかったら・・・、なんて今は考えたってしょうがない。 太陽が気持ちよくて、鳥のさえずる声と木の葉の音が心地よくて、・・・メグが隣りにいるのにこんなに穏やかでいられるんだから、今は・・・ 「・・・今はそんなことどーでもいいじゃん」 えっ? また驚いてメグを振り返る。 ・・・今、おんなじこと考えてた? メグは、やっぱり眠っているかのように目を閉じたままだった。 ・・・そうだね。 あたしも再び膝の上に顔を乗せた。 ・・・今なら、6年前のコト、謝れるんじゃない? もしかしたら、また、幼なじみに戻れるんじゃない? 思い切って呼びかけようとしたら、 「メ、グ・・・」 声がかすれて、上手く名前が呼べなかった。 って、メグって呼んでいいのかな? あたしさっきは、「千葉くん」って呼んでたし・・・ やっぱ言い直した方がいいか・・・ 「ち・・・」 「なに?」 さっきまで眠っているみたいに寝転がっていたメグが、起き上がってあたしを見ていた。 また心臓が飛び出るくらい驚いた。 「・・・え? え・・・と?」 メグが目を細めてあたしを見つめる。 え・・・と・・・ あたし、なに話そうとしてたんだっけ・・・ |
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急にまた心臓がドキドキしてきて、何を話したいんだったか忘れてしまった。 けど、メグから視線を外すことが出来なくて、そのまま見つめ合っていたら、 「あ―――ッ! 真由たち、こんなとこにいたぁッ!」 と、あたしたちがいる川原らしき所の先の方から、ミドリと涼がやってきた。 「何やってんの? お前ら」 「が、崖から、落ちて・・・」 と説明しかけて、「って、あんたたちこそ、どこから来たのっ!?」 「え? あのバーベキューやってる川原からだけど?」 ミドリが自分たちが来た方向を指差す。「ここ、那珂間川の支流かなんかだったのかな? 歩いて来たら繋がってた」 え――――――ッ!? そ、そうだったの・・・? 助けが来なかったらって、思ってたのに・・・ 「ま、なんにしても、良かったな」 と言ってメグが立ち上がる。 「あ! メ・・・」 ―――じゃなくて・・・ 「千葉くん、足 大丈夫?」 メグが小さくあたしを振り返る。メグは一瞬だけ眉間にしわを寄せたあと、 「・・・大丈夫だよ。市川さん? 心配かけて、ゴメンね?」 と他の女子に見せるようなソフトな笑顔で返してきた。 「足?」 涼が眉をひそめる。「足がどーかしたのか?」 「あ・・・ あたしが崖から落ちちゃって、そのとき・・・ち、千葉くんのことも巻き込んじゃったの」 あたしがそう説明すると、涼はますます眉間にしわを寄せて、 「オイッ! お前、明日・・・」 とメグの肩をつかむ。 メグはそんな涼を遮って、涼の耳元に口を近づけ何か耳打ちしたみたいだった。 「・・・はぁ?」 涼がメグを見返す。そして、あたしの方をチラッと振り返ったあと、再びメグの方を向いて、 「お前、あれは・・・・・・チャだぞ?」 「いいじゃん。オレにも貸せよ」 ん? 何の話してるんだろ? よく聞こえないや。 あたしたちが森にいた時間は、1時間にも満たないくらいの時間だった。 ・・・なんだ。3時間くらい経ってると思ってたけど・・・ 焦るあまり、時間の感覚まで狂ってたみたい・・・ そのあとみんなで焚き木になりそうな枝を拾って、なんとか親睦バーベキューをすることが出来た。 |
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