パーフェ☆ラ 第2章
@ 押し込み強盗の噂
「これで5回目!」 目の前に座っているミドリが呆れたような目線をあたしに向ける。 「え? なにが?」 「あんたが溜息ついた回数! この昼休みだけでも、もう5回も・・・」 と言ったあと、ミドリは大げさに溜息をついて、「・・・とかやってんの!」 「ウソ? マジで?」 ・・・全然気が付かなかった。 「一緒にいるこっちまでブルーになんだけど?」 「ゴメンゴメン! 全然なんでもないから!」 ホントかよ、と言いながら、またミドリはお弁当に箸を運んだ。 あたしの名前は市川真由。この県立総武高校の2年生。 クラス替えから1ヶ月がたち、ミドリやチハルとは1年のときから同じクラスだったけど、やっと他の新しいクラスメイトとも親しくなり始めた頃だった。 高2っていったら、受験まであと1年余裕があるし学校にも慣れてきて、遊びや部活や・・・・・・それから、異性関係に大忙しの年頃だ。 なのにあたしときたら、遊びと言えばカラオケやボーリングとかばっかだし(しかもONLY女子)、部活は写真部だし、一番力入れたい異性関係はまるっきりだし・・・ ―――・・・まるっきり? ・・・そお? あたしが今溜息ついてる原因、これこそ異性関係じゃない? あたしはミドリに気付かれないように、チラリとメグの方を窺った。 メグはとっくにお昼を食べ終わったみたいで、同じバスケ部の涼となにやら雑誌らしきものを見ている。 アレ以降もメグは、今まで通りただのクラスメイトとしてしかあたしに接触してこない。 ・・・一体、どういうつもりだったんだろう? 気の迷いとか、忘れろとか言われたけど・・・ 最近ではあの一件自体が、本当にあったことなのか・・・それすら疑ってしまう。 ・・・もしかして、アレってあたしの夢? それとも妄想? 「はぁ・・・」 「あ! ほら〜っ!! また溜息ついた!」 ミドリが眉間にしわを寄せる。 あたしの溜息の原因は、クラスメイトで、幼なじみで、お隣さんのメグ・・・千葉恵だった。 ―――・・・あたしは1週間前、メグとキスをしていた。 メグとは小学校5年のときから絶交していたんだけど、この前6年ぶりに仲直りすることが出来た。 きっかけはウチのお父さんの転勤。 てっきりあたしとお母さんも一緒に郡山のほうに引越しするんだと思ったから、それまでモメていたメグと、勝負をつけてやろうと思ったんだよね。 それで、なんだか2人でウダウダ話しているウチに、メグがあたしの事スキってなって、あたしも実はスキだったみたいって気が付いて・・・ ・・・んで、キスしちゃったんだよね。 でも結局、お父さんは 転勤はするけど単身赴任してくれることになって、あたしは引っ越さなくて済んだんだけど。 あのときはすっごく嬉しかった。 だって、やっとメグと仲直りできたのに・・・ しかも、実はスキだったって気が付いたところだったのに、郡山に転勤っ!?って泣いてたから。 メグも寂しがってくれてたし。 だから、単身赴任することに寂しさを感じていたお父さんには悪いけど、あたしは手を叩いて喜びたいくらいだった。 きっとメグも喜んでくれるだろうと思ってそのこと話したら、メグは戸惑った顔をして、 「お前が引っ越すなんていうから、オレも焦ったみたいだ・・・ だから、アレは・・・その、雰囲気っつーか、流れっつーか・・・ とにかく、気の迷いみたいなもんだから忘れてくれ」 ・・・って言われたんだよね・・・ 確かに雰囲気とかそんなのに流されたところはあったかも知れないけど、メグがあたしの事スキって言ったのは、気の迷いじゃないよねっ!? ―――・・・って、・・・ちょっと待って? そういえば、あたし・・・ 別に、メグにハッキリ、 「好きだ」 とか、言われてないよね? 1週間経った今、初めて気が付いたけど・・・ え? でもでも、メグからあたしにキスしてきたんだよね? それって、スキだから・・・だよね? 普通。 それとも・・・ 違うの? メグは、別にスキでもない女の子とキスとか平気で出来ちゃうの? そういえば・・・ メグ、キス上手かったかもしんない・・・ って、あたしは初めてだったから、良く分かんないんだけど・・・ ・・・・・・もしかして、メグはもう誰かとキスしたコトあった? ・・・・・・・・ なんか、そんなことを悶々と考えていたら、もの凄くムカついてきた。 なによっ! メグのヤツっ!! 気の迷いとか、忘れろとか・・・ あたしアレがファーストキスだっていうのに、忘れられるわけないじゃんっ!! そっちが忘れろとか言うなら、こっちだって、 「あたしのファーストキス、返してよっ!」 って言ってやるからねっ!! そうだ。 ドロボーっても言ってやろ。 さすがに教室で、 「ドロボー! あたしのファーストキス返してよっ!!」 なんてやれないから、今日ウチに帰ったら文句言ってやる! 絶対言ってやる。 それで文句言い終わったら、ベランダの仕切りを塞いでやるんだからっ! 実はあたしとメグの部屋は隣り合っていて、小学生の頃はよくベランダの仕切り越しに話したりしたもんだった。 「ねぇ、お母さん。 あの仕切り破っちゃダメ? メグんちにすぐ行けるようにしたい」 なんて言って、小さい頃はよくお母さんに怒られていた。 その仕切りを、1週間前メグが突き破っていた。 ―――それで、そのあとあたしのファーストキスを・・・っ!! 「ちょっと、真由? あんた具合悪いんじゃないの?」 「は?」 ミドリが眉間にしわを寄せてあたしの顔を覗きこんでいる。 「なんか、赤くなったり青くなったりしてるよ? 顔」 マ、マジでっ!? 「べ、別に平気っ!」 「そ? チハルも風邪引いてるみたいだし、もしかして真由も?とか思ったよ」 「違う違うっ! チョー元気だよ! ・・・ちょっとドロボーのことを考えてたら・・・」 「ドロボー?」 ミドリが眉間のしわをさらに深くする。あたしが慌ててみどりに誤魔化していたら、当の押し込み強盗がやってきた。 |
「ねぇ、成田さん。今日佐倉さんは?」 メグが、あたしにではなくミドリに話しかける。 「チハル? 今日は休みだけど? 風邪引いてんの」 「そーなんだ・・・ どうしよう? この前の写真のお金持ってきたんだけど・・・」 「んじゃ、預かってあげるよ」 と差し出したミドリの手の平にメグがお金を乗せる。 「ありがとう」 メグはソフトなスマイルをミドリに向けてそう言うと、また自席に戻っていった。 ・・・あたしのコトは、完全に無視かいっ!? ホントにムカつくっ! 押し込み強盗のクセにっ!! あたしがプリプリ怒っていると、 「なんかさ。やっぱ、千葉もいいよな?」 とミドリがあたしに顔を近づけて声を潜める。 「いいって?」 「この前さ・・・ ホラ、階段のところで真由のこと殴ってたじゃん?千葉」 ああ・・・ あたしが、メグがバカマネ早坂と付き合ってるのはカラダ目的だろうって言って、メグに頬を叩かれた・・・ アレを見ていた一部の女子(特にミドリ)から、メグは責められたみたいだった。 結局メグは、早坂とは付き合ってなかったし、あたしがメグを怒らせたのが原因だったから、あたしがすぐに訂正して騒ぎは収まったんだけど・・・ 「あのときだって、真由が全面的に悪いのに、千葉ってば全然言い訳しないでさ・・・ ちょっとカッコ良くね?」 全面的にあたしが悪いって・・・ そりゃそうなんだけど、もうちょっと言い方ないんかいっ!? もしミドリと男の事でモメたら、絶対友情より男を取りそう・・・ って、友情も厚いけどね。 ミドリは。 だから友達やってるんだけど。 「ふうん。 ミドリ、メ・・・千葉のこと狙ってるんだ?」 うっかり、メグ、と呼びそうになって、慌てて言い直す。 あたしとメグが幼なじみだって事はクラスでは・・・いや、学校内で誰も知らない。 仲直りする前まではあたしも、 「絶対幼なじみだって知られたくないっ!」 って他人のフリしてたんだけど・・・ もう仲直りもしたし、別に無理して他人のフリする事もないかとか思ってんだけどね、あたしは。 でも、なんかメグはいまだにあたしのコト、 「市川さん」 とか呼んでるから、あたしもなんとなく、「千葉」とか「千葉くん」とか呼んでる。 もしかして、ずっと、 「幼なじみだって知られたくないっ!」 って思ってたのは、メグの方だったり? ・・・メグに比べて、あたしパッとしないし? 「お前、あんなのと幼なじみかよ?」 とか言われるのがイヤとか・・・? ―――・・・チョーあり得る・・・ あたしが落ち込んでいるのにも気付いていないミドリは、 「イヤ、やっぱ涼狙いかな〜。チョー競争率高そうだけど」 「そーなんだ・・・」 「それにさ、千葉はもう彼女いるじゃん?」 「ああ・・・」 あたしは曖昧に肯きながら、「それって、男バスマネージャーの早坂のことでしょ? あれね、違うって。 早坂告ってフラれてんだって」 とミドリに教えてやった。 「早坂? 誰それ?」 ミドリは眉を潜めて、「違うよ。 千葉が付き合ってんのは恭子だって」 「きょ・・・っ!? え、ええ〜〜〜っ!!」 あまりの突拍子もない話に驚いてしまった。 「声、でかいよっ!」 ミドリに諌められ、慌てて声を潜める。 「な、何ソレ・・・?」 「知んなかった? そういう噂だよ? よく2人でいんの見かけるし。 この前、塾で遅くなった中野が2人でケンタにいるの見かけたって」 メ、メグと恭子が・・・? 「なんかの間違いじゃない? だって、恭子は・・・」 涼がスキなんだよ? と言いかけて慌てて口をつぐむ。 恭子が涼のコトを好きなのは内緒なんだった。 「それにさ。千葉って女子のコトはみんな名字にさん付けで呼ぶじゃん? なのに、恭子のことだけは呼び捨ててるじゃん?」 そ、そーいえば・・・ 「あ、噂をすれば・・・」 と言って、ミドリが教室の出入り口の方に視線を走らせる。あたしも振り返る。 恭子が4組にやってきた。 てっきりあたしに会いに来たんだと思ったら、恭子はちょっとだけ教室の中を見渡したあと、メグのところに行った。 あたしとメグの席は離れてるから何を話しているのか全然聞こえないんだけど、メグと恭子はちょっとだけ言葉を交わしたあと、連れ立って教室を出て行った。 |
・・・どこ行ったんだろ・・・ 「ホラぁ! 2人で出てった!」 ミドリが興奮気味にあたしの肩をバンバンと叩く。 え・・・ なに・・・? まさか、その噂ってホントなの? 恭子はあたしとメグが幼なじみだなんて知る由もないけど、メグはあたしと恭子が親友だって知ってるよね? あたしにキスしておいて、あたしの親友と・・・って・・・? ちょ、ちょっと待って? マジでワケ分かんないんだけどっ!? 「真由さ、仲いいじゃん?恭子と。 それとなく聞いてみてよ」 それとなく・・・って? そりゃ、聞きたいのはヤマヤマだけどさ・・・ なんて聞くのよ? ってか、あたしかなりドーヨーしちゃってて、まともに聞ける自信ないよ!? 恭子、もう涼のコトは諦めたの? もしかして、カレシできた〜? ・・・とか? ―――ダメだ。露骨すぎる・・・ なんか、あたしに隠してる事とかない〜? やっぱ、親友にも相談しづらいもんかな? 異性関係とかは・・・ ―――って・・・ これじゃ、イヤミに聞こえるよ・・・ あ―――ッ!! 聞きたいんだけど、どうやって聞いたらいいか分かんないよ〜〜〜ッ!! 「あのさ、恭子・・・ もしかして、千葉と・・・付き合ってんの?」 放課後。あたしは部活に向かう恭子を捕まえて、体育館裏に連れて行った。 どう聞こう・・・と悩んでたわりにいいセリフが思い浮かばなくて、結局1番ストレートなセリフを投げかけてしまった。 「千葉くんと・・・?」 恭子がかわいい顔をちょっと傾げてあたしを見下ろす。 あたしは黙って肯いた。 「もしかして・・・ あたしが?」 やっぱりかわいい顔に、今度はちょっとだけ眉間にしわが寄る。 あたしはまた黙って肯いた。 恭子はその顔のままで一瞬絶句したあと、 |
「ないないないっ! 絶対ないっ!!」 と、大慌てで顔の前で手を振った。 「・・・ホント?」 「ホントだよっ!! って言うか、真由? ・・・あたしの好きな人、知ってるでしょ?」 「そーなんだけど・・・」 とあたしは俯いた。「実は、噂になってんだよね。 恭子とメ・・・千葉が付き合ってるって・・・」 恭子の耳にはまだ入っていなかったのか、恭子は自分とメグが噂になってるとは全く知らなかったみたいだ。 心底驚いた顔をしている。 ・・・恭子、驚いた顔もかわいいね? あたしが男だったら惚れてるよ。 「真由・・・?」 かわいい顔があたしの顔を覗きこむ。「・・・もしかして・・・ 千葉くんのこと、スキなの?」 「はっ!?」 今度はあたしがビックリする番だった。 「だから気になって、あたしに確認しに来たんでしょ?」 「ち、違う違うっ! ミドリに聞いてくれって頼まれたのっ! ホラッ、ミドリってミーハーだからっ!!」 ・・・ゴメン、ミドリ。 「そーなんだ?」 「うん・・・」 あたしは平静を装って、「なんかさっ? 千葉ってクラスの女子のことはみ〜んな名字で呼ぶのに、恭子だけ名前で呼び捨ててるじゃん? それに、2人でいるとことか目撃されてるんだよ?」 「2人でって・・・ 部長同士 話する機会が増えただけだよ? それに、名前のコトだって、男バスの2年生はみんな呼び捨ててるし。あたしのコト」 「・・・じゃ、噂は・・・」 「ただの噂っ! って言うか・・・」 と恭子は口に手を当てて、「・・・それって、涼も聞いたのかな?」 「・・・多分・・・ あたしは鈍感だから・・・ 4組でも知らなかったのはアンタくらいだよってミドリに言われたし・・・」 あとは、当のメグぐらいだろうって。 「そーなんだ・・・ どうしよ・・・」 と恭子が俯く。 恭子はしきりに、涼がどう思ったかを気にしている。 2人で溜息をついていたら、女子バスケ部の後輩らしきコが恭子を呼びにきた。 「ゴメン、真由! もし今度そんな噂聞いたら、否定しといてね? お願いっ!」 と言いながら、恭子は体育館内に戻って行った。 「なんだよ?」 夜。 ウチに帰って見たいテレビも我慢して部屋にこもっていたら(あたしの部屋にはテレビがない)9時過ぎになって、やっとメグは帰ってきたみたいだった。 さすがに、破ってある仕切りからメグんちのベランダに入っていくことは出来ないから、あたしは自分の部屋の窓を開けてちょっとだけ身を乗り出した格好でメグに声をかけた。 「・・・あのさ・・・ メグ、恭子と・・・その、なんか、あるの?」 恭子からは何もないってハッキリ聞いたけど、メグの方が恭子のことをどう思ってるのか分かんないもんね。 「恭子? ・・・なんかって、何?」 メグが訝しげな声を上げる。 「噂になってるの、知らないのっ!? メグと恭子が付き合ってるって!!」 一瞬の沈黙の後、メグが、 「・・・知んねー」 ―――・・・やっぱりミドリが言ってた通り、知らぬは本人ばかりなり、なんだ。 プラス、 「あんた、自分が男と縁遠いから、他人のそういうのにも気付かないんだよ!」 と言われたあたしだけ・・・ 「・・・で? なんだよ?」 なんだよ・・・って・・・・・・ ちょっと、メグっ? あんたあたしのこと好きなんじゃないのっ!? だから、この前あたしにキスなんかしたんだよね?? それともやっぱり、メグは好きでもない子とキス出来ちゃったりするのっ!? そこんとこ、ハッキリさせてもらおうじゃないのっ!! 「・・・恭子はあたしの親友だよ?」 ―――やっぱり、 「あたしのコト、どう思ってんのっ!?」 ってハッキリ聞けなくて、恭子の方からつつくしかないあたし・・・ ヘタレ。 「知ってるよ。 女爆笑問題って言われてんだって? 涼に聞いたけど」 とメグは笑っている。「だからお前のこと、田中って呼んでるって」 「あれね〜っ! マジでやめてって言ってんのに、涼のヤツしつっこく呼んでくるんだよね! クラス中に浸透する前にやめさせたいんだけど・・・」 同じクラスで学校イチのモテ男 船橋涼は、お笑い好きで特に爆笑問題のファンらしい。 恭子とあたしがデコボココンビだったことから、一部の男子が、 「女爆笑問題」 ってからかってたんだけど、それを聞いた涼が、 「じゃ、ちっこい方のお前が田中だな」 と言い出した。 女子人気の高い涼がそんなふうにあたしのこと呼んだら、あっという間に女子の間であたしは「田中」になってしまう・・・ マジでやめて欲しいっ!! 「・・・まだ、下の名前呼び捨ての方がいい?」 「そっちの方がマシかな〜・・・ 田中よりは・・・」 ・・・・・・って・・・ なんで呼び方の話なんかしてんの? あたしたち・・・ 「〜〜〜じゃ、なくてぇっ!!」 「だから、なんだよ? ハッキリ言えよ」 メグに急かされ、慌ててしまうあたし。 「い、言うよっ! ・・・き、恭子は、あたしの親友だよっ!?」 「それ、さっき聞いたよ」 対象に、落ち着いたメグの声。 ・・・・・・ムカつく。 ホントはこっちがイロイロ問いただしてやろうと思ってたのに・・・ |
「だっだからっ!! キズ付けたら許さないってことっ!!」 「恭子を?」 「そーだよっ!!」 仕切りの向こうが一瞬静かになる。直後、 「・・・いつも、千葉くんて優しいよね、って言われてるけど?」 ―――ノロケかいっ!! 「ああ〜っそっ!! それは良かったねっ!?」 仕切りの向こう側に怒鳴りつける。「せいぜい恭子や、ミドリや、クラスの女子み〜んなに優しくして、株を上げなよっ!」 ここ何日間か、ずっとメグのこと考えて悶々としてた自分が馬鹿らしい! 結局メグは、あたしの引っ越しの話聞いて、流れであんな事しただけなんだっ! 別に、あたしのこと好きでもなんでもないんだよねっ!? ―――・・・あたしは、ドキドキの原因が・・・ メグのコトが好きなんだって気が付いたっていうのに・・・ 「あぁ、そうそうっ! ついでだから言わしてもらうけどさっ」 「あ?」 「ここの仕切りっ! 直しといてよねっ!! あんたが破ったんだしっ!」 あたしがワザとらしく、「これ以上押し込み強盗とか? 入られたくないしっ!」 と、暗にキスのことをほのめかしても、 「・・・ここ、3階だけど・・・ 何? この社宅でどっか泥棒とか入られてんの?」 ・・・ねぇ? それ、とぼけてんの? それとも、天然? 「〜〜〜もういいよっ! あたしが勝手に直しとくからっ!! あとで請求するからねっ! 修理代っっ!!」 あたしはそう言い捨てると、ベランダの窓を派手に閉めた。 ムカつくムカつくムカつく〜〜〜ッ!! もうメグなんか知らないっ!! あのキスの事も忘れるっ!! メグのバカ―――ッ!! |
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