チェリッシュxxx 第5章
@ 憧れの先生
「どうもありがとう。―――えーと・・・ 村上さん、だっけ?」 「はい」 あたしはノートを会議テーブルの上に積み上げた。「あの、他に何か手伝うこととかあります?」 「ううん、ないわ。・・・って言うか、敬語止めて? そんなに年はなれてないんだから」 ライトブルーのスーツがよく似合う成瀬先生は、照れくさそうにちょっとだけ笑った。 |
「でも、先生にタメ口なんてきけませんから」 「先生って言っても、教生なんだけどなぁ」 と座っている椅子をちょっと揺らしながら、「それに、あたし自身、あっちの仲間って言うより、村上さんたちの方に入りたいんだけど」 と声をひそめて言って、目線を他の先生たちの方に向ける。目線の先では、ジャージ姿でスポーツ新聞を読んでいる川北先生がいた。 あたしも声をひそめて笑いながら、 「先生って、面白いですよね? なんか、先生っぽくない。お姉さんみたい」 「う〜ん? 褒め言葉と思っていいのかな?」 「すごく褒めてます!」 「ありがと。ま、村上さんより4年は余計に人生経験あるから。何か相談ごととかあったら、いいアドバイスできるかもね」 「あ・・・ じゃ、早速、来週ある数Vの確認テストの問題なんか・・・」 「こらっ!」 成瀬先生が、持っていたボールペンであたしを叩く振りをする。あたしも笑いながらそれを避ける振りをした。 あたしの名前は村上結衣。この桜台高校普通科の3年生。自他共に認めるフツーの女の子。 ・・・いや、フツーよりちょっとだけトロくさいかも・・・ あたしも成瀬先生みたいに、カッコいい大人の女性になれるかなぁ。 実は今週から、教育実習生がやって来ていた。 本当だったら3年生のクラスになんか回されないんだけど、成瀬先生はウチの卒業生で、成瀬先生が専修している数学を在学中に教えていたのがあたしたちの担任だったこともあって、成瀬先生は一応3−Aに在籍する形になっていた。 成瀬先生は、とってもキレイで美人でスタイルもよくて、で、頭もよくて・・・もう あたしの憧れ。 初日に教室に入ってきたときなんか、男子が色めき立っちゃって大変だった。 自己紹介の後、簡単な質問タイムになったんだけど、 「センセー! 彼氏は〜? いなかったら立候補してもいい〜?」 とか、 「スリーサイズ、知りたいな〜」 なんていう男子たちの質問にも、 「ちょっと前までは付き合ってた人がいたけど、今はフリーよ。でも、年下はお断り。ゴメンね」 とか、 「スリーサイズね・・・ じゃ、まずはキミから教えてもらおうかな」 なんて具合に、あたしだったらシドロモドロになっちゃうところ、成瀬先生はカッコよく切り返していた。 あたしはずっとお姉ちゃんが欲しかったせいもあって、すごく成瀬先生に憧れを抱いていた。 「結衣?」 会議室に麻美が入ってきた。 成瀬先生たち教育実習生には個人の机はなく、職員室の続き隣りになっている会議室のテーブルで資料作りや、予習などを行っていた。 「あ、麻美。どうしたの?」 麻美は会議室の入り口のドアに手をかけたまま、 「今日、塾がない日だから、一緒に帰ろうと思ったんだけど・・・」 とあたしと成瀬先生の顔を交互に見た。 「あ、そうなの? 帰る帰る! あ、それじゃ、先生。さよなら!」 「またね」 先生と笑顔を交わしながら会議室を後にした。 「ゴメンね。探させちゃったよね?」 廊下を歩きながら麻美に謝る。 「別に、それはいいんだけど。 教生と何話してたの?」 「ノート運ぶの手伝ってたの。あと色々」 麻美は、ふうん、と興味なさそうな返事をした。 「成瀬亜矢子先生!憧れちゃうよねっ?」 あたしがそう言うと、麻美は、 「憧れ? なんで? ただの教生でしょ?」 「だって・・・ キレイで美人だし・・・気さくだし・・」 「そう? ・・・っていうか、あたしあの教生、あんま好きじゃない」 |
「え?」 麻美を見たら、ちょっとだけ眉間にしわを寄せている。「な、なんで?」 「だってあの教生、男と女の前じゃ態度違うのよ? 感じ悪〜い!」 「そ、そーかな・・・ あたしは、そんな、イヤな態度には思えなかったけど・・・」 「あーゆータイプの女はね、自分より下と見た女にだけ優しいの! ・・・結衣は子供扱いされてんの! ナメられてんのよ!」 ―――いや、実際、成瀬先生と比べたら子供だけどさ・・・ でも、そんな、麻美が言うほど意地悪い先生じゃないと思うけど・・・ 「あの・・・、麻美? 成瀬先生ね、年下には興味ないって言ってたよ?」 「は?」 麻美が目で問いかけてくる。 「だから・・・ 心配しなくてもいいと思うよ? 五十嵐くんのこと・・・あたっ!」 頭を叩かれた。 「誰もそんなこと言ってないでしょっ!?」 麻美は顔を赤くして、「もう・・・ 花火大会のときだって、余計なことしてくれて・・・」 とあたしを睨んだ。 夏休みに江戸川の花火大会があったんだけど、あたしはなんとか麻美と五十嵐くんをもっと仲良くさせたくて、一芝居うっていた。 けれど、あたしの演技が通用したのは五十嵐くんだけだったみたいで、麻美にはバレバレだった。翌日すぐに、 「余計なことしないでって、言ってるでしょっ!」 と麻美に怒られてしまった。 でも、結局二人で花火見れたんだから、いいよね? 麻美も最後には、 「・・・まぁ、結衣の気持ちはありがたかったけど・・・」 って言ってくれたし。 あたしがでしゃばって五十嵐くんとの仲を取り持とうとするのを、麻美は嫌がっている。 それは、五十嵐くんには別に好きな人がいるから。 あたしなんか、 「あの飄々とした感じの五十嵐くんに好きな人が?」 って思うんだけど・・・ でも、麻美の話だと、五十嵐くんとその子はあんまり上手く行ってないっていうか、五十嵐くんの片思いみたいだったから、 「チャンスあるじゃん!」 って思ったあたしは、色々・・・余計なこととは思いつつも世話を焼いてしまっていた。 ・・・って、麻美にしたら、 「・・・結衣に世話焼いてもらうようになったら、あたしもおしまいよね」 とか思ってるかもしれないけど・・・ 「へぇ、普通科には、そんな美人の教生なんか来てんだ。いいな〜」 朝。学校までの道を歩きながら、陸がうらやましそうな声を上げる。 「商業科には来てないの? 教育実習」 「来てるよ。でも、全員男」 陸は舌打ちしながら、男濃度を上げるなっつーの、と呟いた。 「すごく素敵な先生でね、あたしも憧れてるの。お姉ちゃん欲しかったから、そんな感じ」 「商業科にも来ねぇかな〜」 「どうだろ・・・」 あたしはそう言ってから、「・・・やっぱり、興味・・・ある?」 「そりゃ、男だからね。美人には興味あるよ」 ―――だよね・・・ あたしが成瀬先生の話始めたんだけど、そんなに興味示されると・・・ やっぱり話さなければよかった、なんて自分勝手な事を考えてしまう・・・ 「でもね、一番興味あるのは、結衣!」 と陸があたしの頬を突付いた。「だって、まだ全然結衣のコト知らないし。オレ」 「え?」 どーゆー意味? |
「・・・まだ、5回しかヤッてない。 それに浴衣姿の結衣とも・・・」 「―――ッ!! 信じられないッ!」 あたしは陸から顔を背けて、学校へ向かって足を早めた。 なんで陸って、こうエッチなのかなぁっ!! 「ゴメンゴメン!」 陸が追いかけてきて、再びあたしと並ぶ。 「もう・・・」 「だって、ホラ。最近 文化祭の準備とか色々あって、なかなか一緒にいられないじゃん? オレもバイト入ってたりするし」 陸は、夏休みからコンビニでバイトを始めていた。それは、あたしを旅行に連れて行ってくれるためで、あたしたちは夏休みの終わりに沖縄に行ってきた。 ・・・海には全然入れなかったんだけど。―――陸のせいでっ!! でも、遅くまで働いて、あたしを沖縄に連れて行ってくれた陸の気持ちはすっごく嬉しかった。 「・・・旅行も行けたのに、まだバイト続けるの?」 「ん〜・・・ 辞めよーかなーとか思うんだけど、時給いいし、東大も辞めないでくれとか言ってるし・・・」 「東大って?」 「バイト仲間。東大生なの」 「へぇ・・・」 東大生でも、コンビニでバイトしたりするんだ・・・ 「それはそうと・・・ 今日シフト入ってないんだ、オレ」 「そーなんだ。 ・・・あ、でも、あたし今日・・・」 とあたしが言いかけると、陸があたしの耳元にちょっとだけ顔を寄せて、 「だから、もっと知り合わない?」 「ん?」 「・・・6回目・・・・・・って、いてっ!」 持っていたカバンを陸の背中にぶつける。 「―――残念でしたっ! 今日、あたし文化祭の買出し係で一緒に帰れないのっ!」 「ええっ! なんだよ、それ〜・・・ そんなのサボっちゃえよ!」 「サボれないっ! もうっ!」 ちょうど学校に着いたから、まだブツブツ言っている陸を置いて、あたしは普通科校舎に飛び込んだ。 「・・・そう言うわけで、彼がすぐに・・・なんて言うか・・・そっちの方にばっかり持っていこうとするんです」 その日の昼休み。またあたしは会議室にいる成瀬先生のところにやって来ていた。 「村上さん、カレシいたんだ〜? ちょっと、意外」 「よく言われます」 しかも、相手が陸だっていうと、さらにみんな驚くんだよね・・・ 陸は背も高くて、運動神経も良くて、カッコよくてモテるから。 それに比べて、あたし超がつくくらい平凡だし。 「ま、ね・・・ 高校生くらいの男の子って、1回それ覚えちゃうと、もう頭ん中セックスのことしか考えられなくなっちゃうからね〜」 「ッ!? セッ・・・」 成瀬先生が、普通に会話するかのようにその単語を出したから、あたしは焦ってしまった。 「せ、先生っ! そんな大きな声でっ」 「え?」 「だ、誰かに聞かれたら恥ずかしい・・・」 あたしは慌てて周りを見渡した。 ―――良かった・・・ 誰も聞いてないみたい・・・ ホッと安堵の溜息をついていると、 「やっだ! 村上さん、か〜わい〜♪ 今どきいるんだ? こんな高校生!」 と先生がお腹を抱えて笑っている。 「はい?」 「いいな〜。 貴重よ? 村上さんみたいな子」 「先生・・・ そんなにおかしいですか・・・?」 上目遣いに先生を見上げる。 「あ、違う違う! バカにしてるんじゃないの! 初々しくていいな〜って」 先生はまだ笑いながら、「あたしにもこんな時期があったのね」 「・・・とにかく、彼がそーゆーコトばっかり言ってきて・・・ それだけが目的なのかなとか、ちょっと思っちゃうこともあって・・・」 「そんなことないわよ! って言うか、高校生ぐらいじゃまだ心と身体のバランス取れてないから、しょうがないの。頭では大事にしようって思ってても、身体は野獣だから言うコトきいてくれないの」 「そ、そうかな・・・」 陸、頭の中でも、エッチなこと考えてそう・・・ って言うか、実際、想像の中であたしに・・・ほ、奉仕させてるとか言ってたコトあるし・・・ あたしがそんなことを悶々と考えていたら、 「そうよ。 ・・・それにしても、意外だったな」 と成瀬先生はちょっと考え込むような顔をして、「あの子、結構エロいのね」 「えっ!?」 せ、先生、陸のコト知ってるのっ? 「真面目そうな顔して・・・」 ―――え? 「もっとストイックな感じかな〜とか、思ってたのに」 え? ・・・陸が、真面目そうでストイック? 「ちょっ・・・? え? 先生、誰のコト言ってるんですか?」 「え? 村上さんの彼のことでしょ? 五十嵐くん」 「はっ!? 五十嵐くん―――・・・って、まさかっ! 違いますよっ!!」 あたしは大慌てで手を振った。先生はあたしの脇腹を突付きながら、 「別に隠さなくてもいいのに〜! 昨日の朝、SHR二人で遅れて来たじゃない」 「違っ! ・・・あたしたち風紀委員でッ!」 「内緒なの? じゃ、誰にも言わないでおくわね♪」 「ホントに違うのに〜・・・」 あたしと成瀬先生がそんな話をしていると、別な先生が入ってきた。あんまり見たことない先生だから、多分商業科の先生かな・・・ 「えーと、成瀬さん?」 「あ、はい」 成瀬先生が椅子から立ち上がる。「何か・・・?」 「急で悪いんだけど、午後の授業、商業科のほう行ってくれます? 木下先生には了承とってあるから」 木下先生と言うのは、あたしたち3−Aの担任で、成瀬先生の指導教員。 「いいですけど・・・」 と成瀬先生はちょっと首をかしげて、「何すればいいんですか?」 「イヤね、急に体調崩した先生の代わりをして欲しいんだけど・・・、って言っても、自習だから安心して下さい。でもあいつら、誰か教師がいないとすぐに遊び出すから・・・。見張りみたいなもんです」 「はぁ」 「あ、成瀬さん。PLとかBS分かります?」 「簿記3級程度なら・・・」 「素晴らしい! それだけ出来れば、あいつらには十分対応出来ます」 じゃ、プリント持ってきますから、と言って、その先生は会議室を出て行った。 「うわ〜。商業科なんて、行くと思わなかったわよ!」 先生は慌てて会議テーブルの上に広げてあった資料を片付け始めた。 確か、BSって、前にあたしが、 「衛星放送のコト?」 って聞いて、陸に大笑いされた・・・あれのことだよね? ・・・すごいな〜、成瀬先生! 数学を専門に勉強してるって言ってたけど、そんなことまで分かるんだ。 美人だし、スタイルいいし、気さくだし、・・・で頭も良くて。 ホントにカッコよくて、憧れちゃうよ! 「どうしよっ、あんなコト言っちゃったけど、覚えてるかな〜っ。もうしばらくやってないんですけどっ?」 なんか忙しそう。邪魔しちゃいけないよね。 「先生、それじゃあたし・・・」 「あ、うん! ゴメンね。 またなんかあったら来てね!」 あたしは、手短に挨拶をすると会議室を出た。 成瀬先生、どのクラスに行くんだろ? 「商業科にも、来ねぇかな〜」 急に、今朝 陸が言っていたセリフを思い出した。 ―――・・・・・・ ・・・べ、別に、陸のコト疑ってるわけじゃないからっ! あたしに一番興味あるって言ってくれたし? 成瀬先生だって、年下はお断りって言ってたもんね。 そうそう! ・・・あたしは教室に戻りながら、成瀬先生が向かったクラスが、陸のクラスじゃないことを祈っていた。 「えっと・・・ あと、何買うんだっけ?」 「紙コップ」 放課後。あたしは五十嵐くんと一緒に文化祭の買い出しに来ていた。 昨日のSHRで、買い出し係を決めるときにいなかったからって、いつの間にかあたしたちが行くことに決められていた。 「・・・なんか、風紀委員を決めるときもこんな感じだったよね?」 「ああ・・・ そうだっけ?」 「そうだよ! あたしなんか、小心者だからイヤって言えなくて?」 「イヤだったんだ?」 「やだよ〜! そんなやったことない委員なんか。今は慣れたけど・・・ 五十嵐くんだって、面倒とか思ったでしょ?」 五十嵐くんはちょっと笑って、 「まあね」 「まあね、って・・・ 五十嵐くんはテコンドーとか?やってるからいいかもしれないけど、あたし商業科とか、すごく怖かったもん」 「そう言えば初めの頃、よく間違えてたよね? 村上さん」 「え? なにを?」 「テコンドーとセコンド」 五十嵐くんは、やっぱりちょっと笑いながら、横目であたしを見下ろしている。 「しょ、しょーがないでしょっ! 知らなかったんだから〜!」 と言いながら五十嵐くんを叩こうとして、その背後に視線が釘付けになった。 道路を挟んだ向こう側に、陸がいる。 今日はバイトがないから一緒に帰ろうって言われてたんだけど、あたしは買い出し係があったから、陸には先に帰ってもらっていた。 ・・・んだけど・・・ 陸はあたしに気付いていなかった。 ―――え・・・? なんで・・・? 「・・・どうかしたの?」 と言いながら、五十嵐くんもあたしが見ている方を振り返った。「―――え?」 陸は一人じゃなかった。 なんで、あの二人が一緒にいるの・・・? 「・・・アレって、ウチのクラスの、教生だよね?」 |
陸と一緒にいたのは、成瀬先生だった。 二人はコーヒーショップの前に立っていて、何か話している。 え? なんでなんで?? 何がなんだか、分かんない・・・ 陸は、ちょっと困ったように笑いながら成瀬先生に何か話しかけている。 成瀬先生が、陸の腕に自分の腕を絡めた。けれど陸はそれを解こうともしない。 ・・・陸? なにやってるの・・・? 急に陸が成瀬先生の顎をつかみ自分の方に向かせた。直後、成瀬先生が背伸びをして、陸に素早くキスをした! ―――ちょ、ちょっとっ!? 「危ないッ!!」 慌てて道路を渡ろうとしたら、五十嵐くんに腕を引っ張られた。「―――信号、赤だよ・・・」 陸と成瀬先生はそのまま駅の方に歩いて行った。 ちょっと・・・ どういうこと? もしかして、成瀬先生が今日行った商業科って、陸のクラスだったの? 「男だからね。美人には興味あるよ」 先生があんまり美人だったから、・・・声かけちゃった・・・の? |
ううんっ! 陸がそんなことするわけ・・・・・・ ―――――ないって言い切れる? 目の前の信号が青に変わり、周りの人たちがどんどん歩き出す。でも、あたしはその場に立ちつくしていた。 「・・・村上さん?」 そりゃ、先生は陸とあたしが付き合ってるって知らないんだから、しょうがないかも知れないけど・・・ 陸はっ? どーゆーつもりなのっ!? 「1番興味あるのは、結衣」 なんて言ってたくせに・・・っ! 目の前に、成瀬先生が現れたら、あたしのことなんか忘れちゃったの!? 「村上さん?」 五十嵐くんが顔を覗きこんできた。「・・・大丈夫?」 その日の夜。しばらくケータイと睨み合ったあと、思い切って陸に電話をしてみた。 今日、成瀬先生が行った商業科って、陸のクラスだったの? 先生は、年下はお断りって言ってたし・・・ 陸から声かけたの? ―――なんで、キスしてたの? 聞きたい事はいっぱいあったのに、どう話していいのか分からない・・・ 「・・・今日、バイト休みだったでしょ? 何してた?」 『・・・別に、なにも? ・・・なんで?』 ・・・誤魔化してる。 「ううん? 別になんでもないけど・・・」 なんでもなくないでしょっ!? 聞きなさいよ、あたしっ! 「今日ね、買い出し係りでM駅の方行ったの。・・・五十嵐くんと!」 陸はなんか誤解してるみたいで、五十嵐くんとあたしが風紀の見回りとかで一緒にいるだけなのに、よく、 「なんでいつも、あいつと一緒なの?」 って文句言ったりするんだけど・・・ あたしが、わざと五十嵐くんの名前を出しても、 『・・・そーなんだ。何買ってきたの?』 とスルーされてしまった。 あたしが五十嵐くんと一緒に買い物に行ったっていうのに・・・ それだけ? もうあたしには興味なくなっちゃった? 成瀬先生の方が良くなっちゃった? ハッキリ言ってよ! って言うか、もう、キスしてたよねっ!? 先生とっ!! どういうつもりなのよっ!! 陸っっ!!! |
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