be mad for Love  #6


真由が泣きそうな顔をして、自ら高みに昇ろうとしている。
「や、やだ・・・ んっ・・・ み、見ない・・・で」
オレの視線から逃れるように真由が身体を捻る。
真由は下肢の付け根に指を這わせたまま、でも、その膝を固く閉じている。
「何やってんだよ。そんなんじゃ、よく触れねーだろ」
「い、いやぁっ!! や、やめてっ!」
両手をかけて、真由の膝を割る。 真由が目尻に涙を浮かべて首を振る。
「やだ・・・ メグ、やだよぉ・・・」
「やだって。 ちゃんと動いてんじゃん。お前の指」
「やだぁっ! あ、あぁんっ!! んっ!」
頭では拒否しながら、でもその指の動きを止めることも出来ないまま、熱いものを溢れ続けさせる真由。
「・・・すげーエロいカッコ。 つか、シーツびしょ濡れ」
「やだ・・・ メグ、メ・・・ お願い・・・ ゆるし、てっ」
普段の真由だったら、絶対こんなことしない。
というか、おそらく自慰行為自体初めてだろう。
何度も高みに持ち上げられて。
でもその直前で引きずりおろされて。
普通の状態でもそんなことされたら焦燥感で狂いそうになるのに、今日はオレに無理矢理アルコールまで口にされている。
真由の精神状態が普通じゃないことは容易に想像がつく。
「あっ、あぁん!」
切なそうに、苦しそうに寄せられた眉。
軽く汗ばみ、ピンク色に上気した肌。
思わず食べたくなる唇からこぼれる官能的な吐息。
その全てが、オレの下半身を熱く奮い立たせる。
まるで心臓が移動したかのように、そこが大きく脈打つ。
―――本当はオレだって、今すぐ真由の中に入りたい。
躊躇うように、でも確実に自分を高みに持っていこうとしている真由の細い指をどかして、この熱く張りつめたものを沈めたい。
―――でも・・・ これはお仕置きだ。
「あ・・・はぁっ メ、メグ・・・ ごめ・・・な、さ・・・ も、許し・・・・・ あ、あぁんっ!」

社宅の階段の下で、矢嶋が真由を抱きしめているのを見たときは、怒りで身体が震えた。
オレは、矢嶋が小学校のころから真由に気があることを知っていた。
そしてそれは真由だって同じだ。
だからオレは事あるごとに、
「矢嶋には会うな!」
と真由に言い含めている。
・・・・・なのに、なんで矢嶋と会ってた?
「オレにしろよっ! オレだってお前の事・・・ッ」
そう言われて、矢嶋に抱きしめられて・・・・・ お前、なんで抵抗しなかった?
―――いや、それより・・・
「市川が知らなかったこと、教えといてやったよ!」
って、矢嶋が言ってた・・・・・・ アレはなんだ?
最初オレは、まさか矢嶋と真由との間に何かあったなんて思いもしなかった。
矢嶋は真由のことを好きだったけど、真由にはオレがいる。
それは矢嶋も知っていることで、ああ見えて矢嶋はヒトの女に好んで手を出すような男じゃないことは分かっていたから。
だから今日も、真由はたまたまどこかで矢嶋に会って、それでウチまで送られてきただけだろう・・・そう思っていた。
だから、はじめに社宅の階段の下で2人が一緒にいるところを見ても、腹は立ったけどそれを表に出さないように収めることが出来た。
オレと早坂とのことで勘違いしてオチていたところを慰められた・・・そう思ったから、頭ごなしに真由を怒鳴る事もしなかった。
オレにも非がある事だ。 仕方ない。
けど。
矢嶋の、あの いつにない挑戦的な態度・・・
今までもからかい半分で煽ってくることはあったけど、あんな真剣にオレに食ってかかって来たのは初めてだ。
そして、
「市川が知らなかったこと、教えといてやったよ!」
あの矢嶋のセリフ・・・
あれを聞いた瞬間、真由と矢嶋の間に何があったか察した。
あの時、階段を駆け下りて行って矢嶋を殺さなかった自分を褒めてやりたい。
あそこで矢嶋を殺していたら、オレのこの気持ちは収まらないまま、一生を過ごす事になっていただろう。
殺すぐらいじゃ、物足りない。
・・・アイツには、死以上の苦しみを与えてやる。
真由はオレのものだ。
真由をオレから奪うヤツは、誰であろうと許さない。
例えそれが真由自身でも・・・

「あ、はっ、はぁ、はぁ・・・ や、あぁ・・・」
初めは恥ずかしさで死にそうな顔をしていた真由が、蕩けそうな表情で自分の下肢の付け根に指を這わす。
自らの行為で、熱いものを溢れさせながら・・・
―――いいよ、真由。
最高に可愛いよ。
「あ、あぁん・・・ あ、はぁ!」
最高に可愛くて、最高にエロいよ。
「やっ、は、はぁっ、はぁ!」
真由の呼吸が浅く短いものに変わり、腰が小刻みに揺れ始めた。 爪先にも力が入っている。
もうイクの? 早いね?
・・・って、さっきから何回も直前で止められているから、昇りつめやすくなってんだろうけど・・・
でも・・・ 悪いな。
そんなに簡単にイカしてやれないんだよ。
「あ・・・あぁっ! はぁ・・・・・・ ッ!? や、いやぁっ!」
昇りつめる直前に真由の手をそこから引き剥がす。
また真由が泣きそうな声を上げた。
「や、やだぁ・・・ メグ・・・ ど、どうして・・・」
「どうして?」
・・・お仕置きだって言ったろ? さっき
オレは再び真由の腕を背中に回してタオルで縛り上げた。
「やだ・・・ やだよ・・・ メグ・・・」
「なにが」
真由が膝を擦り合わせる。
後ろ手に縛られたまま、焦れたように腰を動かす。
「続き、したかった?」
「ん!」
熱に浮かされたような表情で、何度も肯く真由。
「・・・じゃ、問題」
「え・・・」
「お前・・・ 矢嶋と、何した?」
蕩けそうだった真由の表情が一瞬で凍りつく。
「・・・言えよ。 正直に話したら、サイコーに気持ちイイことしてやるよ」
「・・・メ、メグ・・・」
真由が怯えたような目でオレを見上げながら、首を振る。
さっきも、胸に付いていた痣の事を聞いたら、ちゃんと答えなかった真由。
誰に付けられたのか、オレが分かってて聞いてることも知ってるくせに、ちゃんと認めなかった真由。
オレに責められるのが怖かったのか、それとも・・・お前・・・
「何した?」
「や・・・ ご、ごめんなさい・・・」
真由が何度も首を振りながら、ごめんなさい、と呟く。
わざわざ聞かなくたって、矢嶋と真由がヤッたことくらい分かる。
けど、それが矢嶋に無理矢理されたことなのか、それとも合意だったのか・・・
その違いは大きい。
「あたし、嫌って言ったのに・・・ 矢嶋が無理矢理・・・ッ!」
って真由がオレに泣き付いて来れば、まだいい。
それだったら、矢嶋を嬲り殺しにしてやればいいだけだから、まだいい。
なのに真由は、
「ごめんなさい・・・」
を繰り返していて、本当のことを話そうとしない。
なんでだ?
矢嶋のことを庇ってるのか?
・・・それとも・・・・・ まさか・・・
お前も、合意の上だったってのか・・・・・・?
「・・・お前、ホントに・・・」
我慢していたものが、急に腹の底から流れ出してきた。
「え・・・ あ、いやぁっ!」
真由の膝を持ち上げて、大きく足を割る。
何度も高められ焦らされ続けたそこが、妖しく蠢きまた熱いものを溢れさせる。
「メ、メグ・・・」
真由が不安そうな視線をオレに寄越す。
お前のここ・・・ サイコーに気持ちいいんだよ。
一度入ったら、忘れられない。
いつでも、何度でも入りたくなる。
・・・・・でも、それはオレだけに許されることだ。
他の誰も、それを犯すことは許さない。
「あ・・・ あぁんっ!」
噛み付くようにそこに吸い付いた。
「ひゃっ、あ、あぁ! メ、メグッ き、もち、いぃ・・・ あ、んっ!」
止め処なく溢れ出るものを絡めて、そこに指を差し込む。
オレの指の動きに合わせて、真由が吐息を漏らす。
舌を少し上の方に移動させる。
「あぁんっ!」
もうとっくに固く、自己主張している敏感な芽に舌が触れたら、また真由の身体が大きく跳ねた。
そのままそこを執拗に攻める。
「やっ、あ、はぁ・・・ メグぅ・・・ んんっ」
真由の腰が揺れはじめ、腿に力が入ってきた。
また真由に絶頂が近づいてきた。
タイミングを見て、また真由から離れる。
「ッ!? や、やだぁぁぁ・・・・・ッ!」
真由が泣き叫ぶ。
もう、何回こんなことを繰り返しているのか・・・
・・・・・本当はオレも、真由の中に入りたい・・・
二人の境界線が分からなくなるくらい深く繋がって、この熱いモノをぶつけたい。
「こ、こんな、お仕置き・・・ つらい、よぉっ! も、許してよ・・・」
「・・・お仕置きなんかじゃねーよ」
真由・・・・・?
これはもう、お仕置きなんかじゃない。
制裁だ。
お前はオレのものなんだよ。
おまえ自身のものですらない。 オレのものだ・・・・・
「あた、あたし・・・ こんなことされたら・・・ 狂っちゃうよぉ」
目尻に涙を浮かべて、オレを見つめる真由の瞳。
「・・・狂えば?」
もっとオレに狂えよ。
オレ以外の男なんか目に入らないくらい、オレに狂えよ。
・・・・・矢嶋としたことなんか忘れるくらい、オレに狂えよ!!
「・・・もぅ、あた、し・・・」
真由が浅い呼吸を繰り返しながら、潤んだ瞳でオレを見上げる。
「・・・何」
「ほ、欲しい・・・よぉ」
「・・・何が」
真由が目を細める。
「何が欲しいんだよ。 ハッキリ言えよ」
「・・・メ、メグが・・・ 欲し、い」
消え入りそうな声で真由が呟く。「お願、い・・・ い、挿れて・・・」
全身の毛が逆立った。
「挿れて欲しい、の・・・ お願い・・・ メグ・・・ッ!」
焦れたように膝を擦り合わせながら真由が懇願する。
危うく、真由のそのセリフでイッてしまいそうになった。
・・・どうする?
このまま、繋がっちゃうか?
「メグぅ・・・ 挿れて、よ」
真由も相当焦れているけど、オレだって発狂寸前だ。
―――でも、まだ制裁が終わってない。
真由への制裁は十分したけど、まだアイツへの・・・
矢嶋への制裁が終わってない。
だけど、オレの下半身が限界なのも事実だ。
どうする・・・・・・
オレが狂いそうな頭でそんなことを考えていたら、真由んちのインターホンが鳴った。


―――――――――来た。


「メグ・・・ ホント、に・・・ お願い・・・」
アルコールと、オレがした制裁のせいで、真由は全然インターホンに気付いていない。
熱に浮かされたように、何度もオレを求める言葉を繰り返すだけだ。
慌しく何度も鳴り続けるインターホン。
・・・・・・やっと、アイツに制裁を与えてやることが出来る。
「・・・真由? ちょっと待ってな?」
そう真由に声をかけて、ベッドから降りる。
「や、やだぁっ!! メグ、メグ・・・ 行っちゃ、やだっ!」
「・・・真由」
「やだやだっ! メグ、行かないでっ! あたし・・・」
ベッドに横になったまま、狂ったようにオレを求める真由。
・・・・・・それでいい。
「真由・・・」
オレは優しく真由に口付けて、「戻ってきたら、抱いてやる」
「・・・ほ、ほんと・・・?」
「ああ。 何回でもイカしてやるよ。 サイコーに気持ち良くしてやる」
「メグッ!」
「だから、ちょっとだけいい子にしてな?」
「ん!」
もう一度口付けて、真由に薄手のタオルケットをかけた。 そのまま真由の部屋を出る。
真由の両手は拘束したままにして置いた。
せっかくここまで真由を追い詰めたのに、オレがいない隙に自分でされたら元も子もない。
その間も鳴り続けるインターホン。
オレはバスルームにあったタオルを腰に巻くと、そのまま玄関に向かった。
間違いないとは思うが、一応ドアスコープを確認する。
―――イライラしたようにインターホンを押し続ける矢嶋が見える。
思わず口角が上がる。

今度はお前が制裁を受ける番だよ・・・ 矢嶋―――・・・

To be continued・・・